記憶が歩き出すとき
1961年、横浜の地で産声をあげたハドソン靴店。初代・佐藤正利が開いた小さな靴店は、やがて二代目・村上塁へとその志が受け継がれ、今日まで60年以上、誠実な手仕事とともに歩み続けてきました。私たちの仕事は、ただ靴を直すことではありません。それは、誰かの人生の時間を宿した「一足」と向き合い、記憶を再び歩かせるための営みです。
旅の記憶、暮らしのなかの時間、そして何気ない日々の風景──
そのすべてを丁寧に受け止め、再び日常に送り出す。ハドソン靴店は、「靴の修理は、思い出の修復である」という信念のもと、一針一針に心を込めています。
手仕事が宿す、確かな価値
現在、多くの製靴・修理工程は機械化が進むなか、ハドソン靴店ではあえて手作業にこだわっています。それは、目には見えない「本質」にこそ、靴の寿命と快適さが宿ると信じているからです。縫い目の裏、インソールの接着、補強の角度や厚み。見過ごされがちな細部にまで目を配り、ひとつひとつの工程を正確に、誠実に積み重ねていく。
修理とは、単なる復元ではなく、「これから」の歩みを支えるための準備であり、職人としての誇りでもあります。私たちは効率よりも確かさを、スピードよりも丁寧さを選び続けてきました。それこそが、お客様に信頼していただける靴修理であると考えています。
思い出とともにある靴
靴は、人の人生に寄り添う存在です。日常のなかで履かれ、擦れ、傷つきながらも、持ち主の歩みを支え続けます。そのなかで積み重ねられた時間や感情は、決して新品の靴では代えがたいものです。
ときに新調するよりも、修理を望まれる理由。それは、靴に込められた思い出の重みです。
私たちは、その記憶を尊重し、修理を通じて新たな一歩を後押しできることに、誇りと喜びを感じています。
歴史が紡ぐ、これからの歩みへ
創業から半世紀を超えても変わらない想いがあります。「一足の靴に込められた想いを、まっすぐに受け止めること」。この姿勢は、代が変わっても、技術が進化しても、決して揺らぐことはありません。
そしてこれからも、ハドソン靴店は“修理という技術”を継承し、さらなる高みを目指します。靴を直すことで、人生の時間と向き合い、物語をつなぎ直す。それが、私たちが靴とともに歩み続ける理由です。
ハドソン靴店 店主 村上塁